子どもの頃とは違い、大人になってから始めた趣味。
その中でも「バイオリン」は、長年の憧れだったり、いつか叶えたい夢として挑戦を始めた方も多いのではないでしょうか。
初めて楽器を構えた日のワクワク感。
自分の音が鳴った瞬間の、あの小さな感動。
そしてレッスンを重ねるうちに、「こんな音を出したい」「あの曲をいつか弾けるようになりたい」と、少しずつ理想が膨らんでいく——。
でも、ある日ふと、こんな気持ちが顔を出すことがありませんか?
「また注意された…私って、向いてないのかな?」
レッスン中、先生は当たり前のようにアドバイスや指摘をしてくださいます。
もちろん、それが先生のお仕事であり、私たちが上達するために必要なことだと、頭ではわかっているつもりです。
それでも、心がついていかない日もあるんです。
「左手の形、また崩れてますね」
「弓の動きが止まってしまってる」
「音程が不安定です」
一つひとつは技術的な注意。でも、それが積み重なると、まるで自分自身を否定されているような気持ちになることも。
特に大人になると、「できない自分」を受け入れるのが難しくなるような気がします。
仕事で疲れて帰ってきて、家事にも追われ、それでもほんの少しでも上達したくて練習してきた。
そんな時に受ける『アドバイス』が、心に痛く響いてしまう日、きっと誰にでもあるはずです。
子どものように吸収できない現実
子どもは注意されても、くじけずどんどん吸収していきます。
でも私たち大人は、仕事、家庭、年齢なりの責任や立場が常に心のどこかにあります。心に余白がない中でレッスンに向かっているんですよね。
「間違えること=ダメなこと」
そんな考えが、気づかないうちに自分の中に染みついてしまっていて、先生の何気ない一言が、深く刺さってしまうのかもしれません。
思い返せば、子どもの頃は叱られても「子どもだから仕方ないよね」と多くのフォローがありました。
でも、大人になると、年下の先生に注意されるのは…ちょっとだけ、心がざわついてしまいますよね。
それでも、やっぱり続けたい
悩んだ時、ふと考えることがあります。
「ここまで頑張ったし、でも向いてないのかな…」
「やめる?」と。
でも、やっぱりバイオリンが好き。音が好き。
いつかあの曲を、自分の音で弾いてみたい。そんな思いが、確かに胸にあります。
その気持ちに気づけるとき、ふとこう思えるようになるかもしれません。
先生の指摘は「否定」ではなく、「可能性の指摘」。
「もっと良くなるよ」「ここを直せば、次のステージに行けるよ」という、前向きなメッセージなんだと。
そう思える日は、少しだけレッスンが優しく感じられる気がします。
同じように感じている大人の皆さんへ
もしあなたも、「先生の指摘が辛い」「最近、レッスンが楽しめなくなってきた」と感じていたら、声を大にして伝えたいです。
それは、あなたが真剣だからこそ感じること。
そして、それはとても尊いことです。
私は、生徒としての気持ちも、指導する側の気持ちも、どちらも経験してきました。
だからこそわかるのです。
上手になりたいという思いがあるからこそ、心が動く。
そして、それこそが大人になってからの習い事の、深くて豊かな味わいではないでしょうか。
今日、練習が思うようにいかなかったとしても。
それでも、バイオリンケースを開けて、楽器を手にした自分を、どうか少しだけでも褒めてあげてください。
その一歩が、また次の一音に繋がっていきますから。
講師として、あなたに伝えたいこと
最後に、少しだけ講師としての気持ちをお話させてください。
私たち講師は、決して生徒さんを「否定」したくて指摘をしているわけではありません。
でも、レッスン中にお伝えする言葉が、ときに重く、鋭く、心に残ってしまうことがあることも、実は私たちもよくわかっています。
「ここを直せば、もっと音が生きるのに」
「きっとこの人は、もっとできるはず」
そう思うからこそ、つい熱を込めて伝えてしまうのです。
でも、思いが強すぎるあまりに、受け取る側の心の温度を考えきれなかったり、疲れた日常のなかで向き合っているあなたの努力を、十分にねぎらえていなかったりするかもしれません。
本当は、レッスンに来てくださるだけでも、私たちは心から「ありがとう」と思っています。
仕事や家庭、さまざまなことを抱えながらも「音楽を続けたい」と思い、弦を押さえ、弓を握り、音を出そうとしてくださる——その姿は、とても尊く、美しいです。
だから、もしレッスン中に傷ついてしまった日があっても、どうか「自分がダメだから」とは思わないでください。
むしろ、それはあなたが音楽に真剣だからこそ感じた大切な感情です。
私たち講師も、常に学び続けています。
どう伝えれば、もっと気持ちが届くのか。
どうすれば、あなたの「好き」の火を消さずに、育てていけるのか。
音楽の道は、講師と生徒が一緒に歩く旅のようなものです。
これからも、あなたの音楽人生をそっと支えながら、共に歩んでいけたらと願っています。
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